読書メモ「三千円の使いかた」
「節約家族小説」の謳い文句に惹かれて手にしました。年代も環境も異なる女性4人のストーリーを通じ、「お金と人生」について考えさせられる一冊です。
人生を形作る三千円
人は三千円の使い方で人生が決まるよ、と祖母は言った。
題名にもなっている本書を象徴するフレーズから物語は始まります。
大それたことができるほど多くもなく、使い方によってはすぐになくなってしまうけれど、一方で何か意味のあることにも使えそうな三千円という金額。
「三千円ですることが結局、人生を形作っていく」と主人公の祖母、御厨琴子(73歳)は言います。
御厨家の女性たち
就職して昔からの夢だった一人暮らしを始めた主人公・美帆(24歳)。元証券社員で専業主婦の姉・真帆(29歳)。母・智子(55歳)と琴子。
御厨家の4人は、世代から置かれた環境、貯蓄額までそれぞれに違います。
抱える悩みも、恋人の奨学金、友人のセレブ婚、熟年離婚、貯蓄を取り崩すことへの不安、とさまざま。
これだけ登場人物にバリエーションがあると、読者は誰かしら共通点のある人や共感できる人が見つかることと思います。
私が最も親近感を覚えたのは、節約上手でよいものを長く使うタイプの真帆。
証券会社で働いていた経験から金融の知識が豊富で、貯蓄額の明確な目標を立てて「プチ稼ぎ」や投資、支出の削減に邁進する姿は読んでいて小気味よいです。
節約ノウハウ
本書はハウツー本ではないものの、節約家族小説というだけあって節約や副収入に関するノウハウが数多く登場します。
固定費の見直し、ラテマネー、定期預金の退職金キャンペーン、ポイ活、優待株先回り投資・・・。ちょっと挙げただけでもこれだけのテーマが盛り込まれています。
普段から節約に取り組んでいる人にはおなじみの話題ですが、そうでなければ本書をきっかけに新しい節約のタネが見つかるかもしれません。
まとめ
お金をめぐる悩みは年代や環境によって一人一人異なりますし、同じ人の中でも人生のステージとともに変化していきます。
本書は特定の登場人物に感情移入しながら読むもよし、これから先にどんなお金の悩みが発生し得るかを知るために読むもよし、とさまざまな楽しみ方ができそうです。
題名の通り、いろんな三千円の使い方が出てきますので、それを追いかけながら読むのも面白いでしょう。
金額こそ三千円ではありませんが、御厨家が最後に選択するとても意外なお金の使い方も必見です。